- 東大先端研と共同で「VR旅行」の研究を進める
- VR旅行を体験した高齢者の認知機能と身体機能が改善されることが実証
- 高齢者の認知症人口が増加している中、VR旅行は役立つ可能性がある
東大先端研と共同で進める「VR旅行」の研究が高齢者の「認知機能」「身体機能」の維持・改善に役立つ可能性を実証。
VR旅行を体験した高齢者の認知機能に関わる「視空間認知機能」の向上と、身体機能に関わる「頚椎(首)可動域」の改善がされることが明らかになった。
また、この研究は人間拡張技術の国際会議で特別賞を受賞した。
高齢者の認知症人口が増加している中、VR旅行は認知機能や身体機能の維持や改善に役立つ可能性がある。
- カテゴリ
- 人間拡張技術、ゲーム
- 製品名
- VR旅行
- 人名
- 東大先端研
- 会社名
- 東大先端研
- IP名
——— 以下 プレスリリース原文 ———
~人間拡張技術の国際会議で特別賞を受賞~東大先端研と共同で進める「VR旅行」の研究が高齢者の「認知機能」「身体機能」の維持・改善に役立つ可能性を実証
公開日: 2023/04/25
本研究の結果、VR旅行を体験した高齢者の認知機能に関わる「視空間認知機能」の向上と、身体機能に関わる「頚椎(首)可動域」の改善がされることを明らかにしました。
また、本実証分析の論文を、2023年3月12日~14日に英グラスゴーで開催された、VRやロボットなどの技術で身体的・認知的・知覚的等の能力を補完、向上させる人間拡張技術に焦点をあてた『The Augmented Humans International Conference 2023』会議で発表し、グランプリに次ぐ特別賞(Best Paper Honorable Mention)を受賞いたしました。
65歳以上の認知症の高齢者人口は、2012年当時は462万人で7人に1人でしたが、2025年には約700万人、およそ5人に1人の割合になる(*1)と見込まれており社会問題となっています。
こうした中で、今回明らかになった本研究のVR旅行による「視空間認知機能」の改善は、加齢とともに低下しやすくなる認知機能の維持や改善に役立つ可能性があります。
(*1) 参照:厚生労働省「認知症推進総合戦略(新オレンジプラン)」
■実証実験の目的
当社では、テクノロジーを活用した高齢者の健康促進について開発を進めています。本研究は、その取り組みの一つです。
本研究は、VRによる「認知機能」と「身体機能」の維持や改善効果を明らかにし、将来的に科学的根拠のある認知機能および身体的機能の維持・改善プログラムの確立を可能にすることを目的としています。
■実証実験概要
実証実験は、当社が運営するサービス付高齢者向け住宅「クラシック・コミュニティ横浜」(神奈川県横浜市)に入居されているお客様の協力のもと、ゴーグルのような形状のヘッドマウントディスプレイを使用したVR旅行プログラムを約4週間実施し、その前後の「視空間認知機能」と、「頚椎(首)可動域」の違いを分析しました。
(1) 実施期間:2022年7月16日~9月24日
(2) 対象者:サービス付高齢者向け住宅「クラシック・コミュニティ横浜」にご入居のお客様 24名
平均年齢88.5歳(男性9名、女性15名)
(3) 実験方法:
・VR旅行体験をする14名、普段通りに日常を過ごす(VR旅行体験なし)10名にグループ分け
・VR旅行はヘッドマウントディスプレイを用い、1回30分のプログラムを週3回、計12回実施
・実証前と実証期間終了の約4週間後に各1回ずつ両グループに対し、アンケートの実施と、「認知機能」「身体機能」を計測し、その変化を分析する。
■実証実験の成果
本研究により、VR旅行は、高齢者の「視空間認知機能」と「頸椎(首)可動域」の改善効果を引き出すことを明らかにしました。
「視空間認知機能」は、物や顔などの認識や見つける能力、道具や機器の操作、着衣の能力などで、加齢とともに低下しやすく、認知症を引き起こす要因となります。「視空間認知機能」の改善は、認知機能の維持や改善に役立つ可能性があります。
また本研究で用いたヘッドマウントディスプレイを使用したVR旅行プログラムでは、日常生活よりも首の動きが大きくなり、これにより「頚椎(首)可動域」の運動機能が改善しました。
「頚椎(首)可動域」が改善されることで、転倒しにくくなるなど、日常生活上で介護の原因の一つとなる転倒によるケガの予防につなげることができます。このことから、高齢者の転倒予防のためのトレーニングとしても有用であると考えられます。
<VR旅行を体験したお客様の感想>
VR旅行を体験したお客様からは、「コロナ禍において、施設の中で旅行体験が出来るなんて想像していなかった」「もう二度といけないと思っていた国や観光地に、もう一度行けたようでとても楽しかった」との声をいただきました。コロナ禍で外出制限される中でのVR旅行体験は、実際の旅行で感じることのできる非日常感を味わえるものとして、アクティビティを楽しむ心理的な効果もみられました。
<檜山研究グループ・研究員コメント>
高齢者施設では、身体的な機能が低下している方や慢性的な病気を抱えている方、認知症のある方など、あらゆる面で様々なレベルの方がいらっしゃいますが、高齢者の気分や幸福度に関連する旅行体験をVRで改善できました。また、視空間認知障害のある参加者が、実行機能を含む「視空間認知機能」課題で改善したことに驚きました。本プログラムが視空間認知障害のリハビリテーションに役立つ可能性があることを示唆しています。VR旅行は、これからも多くの高齢者に世界中の美しい景色や文化に触れる機会を提供し、心身共に健やかな生活を送ることにつながることでしょう。
■今後について
今後も継続して、テクノロジーを活用した高齢者の健康促進開発を進めるとともに、将来的には、どなたでも気軽に参加いただける「認知機能」および「身体的機能」改善プログラムの確立を目指してまいります。
<ご参考>
■掲載論文情報
Atsuko Miyazaki, Takashi Okuyama, Hayato Mori, Kazuhisa Sato, Kenta Toshima, and Atsushi Hiyama. 2023.
Visuospatial abilities and cervical spine range of motion improvement effects of a non-goal-oriented VR travel program at an older adults facility: A pilot randomized controlled trial.
In Proceedings of the Augmented Humans International Conference 2023 (AHs ’23). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, 135–146.
https://doi.org/10.1145/3582700.3582715
■東京大学 先端科学技術研究センター 身体情報学分野 檜山 敦(ひやま あつし)特任教授
シニアの柔軟な働き方を推進するジョブマッチプラットフォーム「GBER」や、心身を活性化するVR研究を、社会実現に向けて実証展開。専門はバーチャルリアリティ、ヒューマンインターフェイス、人間拡張工学。100年の一生を通じて参加できる社会を目指し、一人ひとり、そして地球の「できる」ことを増やすテクノロジーの研究開発に取り組んでいる。
(研究室ホームページ:https://star.rcast.u-tokyo.ac.jp/)
■株式会社SOYOKAZE会社概要
在宅系のデイサービスやショートステイ、入居系のグループホーム、有料老人ホームなど、幅広い介護サービスを全国で展開しています。複数のサービスを同一建物内で運営する「複合施設」を多数展開していることが大きな特徴です。住み慣れた自宅で安心して暮らし続けていただくためのサポートとして、「そよ風」地域包括ケアの拡充を進めています。また、既存の介護事業からニーズの高いサービスを抽出した付加価値の高いサービスや新たなサービスを展開。さらに介護事業を通じて培ってきた知見を活かし、シニア領域に限らないサービスを創出しています。
商号: 株式会社SOYOKAZE
代表者: 代表取締役社長 中川 清彦
所在地: 東京都港区北青山2-7-13 プラセオ青山ビル
設立: 1975年6月
コーポレートサイト:https://corp.sykz.co.jp
事業内容:【介護事業】全国で高齢者介護事業を「そよ風」ブランドで展開
【その他事業】有料職業紹介事業、宅食事業、フィットネス事業など
引用元: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000034852.html